「無我」という二字には、複数の異なる意味が存在し、それぞれの文脈において異なる意義を表します。これらの意味を明らかにしてこそ、無我の真意を理解し、修行に着手する方法を知ることができます。第七識における無我とは、第一に不生不滅の性質が無いこと、第二に第八識のような空性が無いこと、第三に主宰性が無いことを指します。第八識における無我とは、第一に第七識のような自我性・利己性が無いこと、第二に第七識のような主宰性・作為性が無いことを意味します。
これらの概念を明確にすることで、初めて「我」と「無我」の真実義を理解し、自らの修行を正しく導くことが可能となります。ただし、これらの概念の迷宮から脱却することも容易なことではありません。
一つの名相概念に複数の意味が含まれる場合、その意義を明確に弁えなければ、曖昧模糊としたままでは修行に着手できません。例えば「真実」という言葉は、文脈によって異なる意味を持ちます。一つは不生不滅の真実相である第八識を指し、これは本来より存在するものです。もう一つは世俗法において事実に符合する相を指し、これは生滅法であって本来の法ではありません。
0
+1