今、天上で雷鳴が轟く音と耳元の蚊の羽音を同時に聞いている。しかし雷鳴はどれほどの時間を経て、どれほどの距離を過ぎて聞こえたのか。聞こえた時には、雷鳴は既に消え去っており、天上ではもう雷は鳴っていない。雷鳴と蚊の羽音が同時に聞こえる以上、音が耳根に届く順序に前後はない。ある音が数秒で耳根に届く場合も、数分かかって伝わる場合も、その音の本質境はなお存在しているか? とっくに存在していない。音を聞いた時、外界の実在の音は既に消失している。では他人が私を罵る声を私が聞いた時、その罵声はなお存在するか? それも存在しない。聞こえた本質境の音の幻化相は、まるで谷間の反響のようである。では聞こえた私を罵る声はどれほど虚妄か? 極めて虚偽で不実である。六識が接触する法はすべてこのようである。
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