四念処経講話 第二版(新修)
第五章 法を観じて住す
第五節 四聖諦の法を観じて住す
一、苦諦を観じて住す
原文:復次。比丘たちよ。比丘はすなわち四聖諦の法において、法を観じて住す。されば、比丘たちよ。比丘はいかにしてすなわち四聖諦の法において法を観じて住すべきか。ここに、比丘たちよ。比丘は如実にこれが苦であることを知り、如実にこれが苦の集であることを知り、如実にこれが苦の滅であることを知り、如実にこれが苦の滅に至る道であることを知る。されば、比丘たちよ。苦諦とは何か。生は苦であり、老は苦であり、病は苦であり、死は苦であり、憂い悲しみ悩み悶えることは苦であり、求めて得られないことは苦である。要略して言えば、五取蘊は苦である。
原文:復次。比丘たちよ。生とは何か。あらゆる所の生類の中において、諸々の衆生の生まれ出づること、産出すること、入胎し転生すること、諸蘊の顕現すること、内外の諸処の摂受すること。比丘たちよ。これを生と名づく。復次。比丘たちよ。老とは何か。あらゆる所の生類の中において、諸々の衆生の年老いて耄(もう)すること、歯の落ちること、髪の白くなること、皮膚の皺(しわ)むこと、寿命の短縮すること、諸根の熟れて衰えること。比丘たちよ。これを老と名づく。
原文:復次。比丘たちよ。死とは何か。あらゆる所の生類の中において、諸々の衆生の消失し散滅すること、破壊し滅亡すること、消滅し死没すること、命終して諸蘊の破壊すること、死屍の放棄されること。比丘たちよ。これを死と名づく。復次。比丘たちよ。憂いとは何か。比丘たちよ。若干の不幸を伴い、若干の苦法によって悩まされ、憂い愁い、内に憂い内に悲しむこと。比丘たちよ。これを憂いと名づく。復次。比丘たちよ。悲しみとは何か。比丘たちよ。若干の不幸を伴い、若干の苦法によって悩まされ、嘆き悲しみ、嘆息し、悲哀し、悲嘆し、悲痛すること。比丘たちよ。これを悲しみと名づく。
原文:復次。比丘たちよ。苦(肉体的苦痛)とは何か。比丘たちよ。身についての苦痛、身の不快、身触によって生じる苦痛および不快の感受。比丘たちよ。これを苦(肉体的苦痛)と名づく。復次。比丘たちよ。悩み(精神的苦痛)とは何か。比丘たちよ。心についての苦痛、心の不快、意触によって生じる苦痛および不快の感受。比丘たちよ。これを悩み(精神的苦痛)と名づく。復次。比丘たちよ。悶えることとは何か。比丘たちよ。若干の不幸を伴い、苦法によって悩まされ、失望し落胆し、気力を失い愁い悶えること。比丘たちよ。これを悶えることと名づく。
原文:されば、比丘たちよ。求不得苦とは何か。比丘たちよ。生の法にある衆生は、かくの如き欲求を生ず。『我等は実に生の法のもとにあらず。我等は生まれてくることを欲せず』。されど、この欲求を得ず。これを求不得苦とす。比丘たちよ。老の法にある衆生は、かくの如き欲求を生ず。『我等は実に老の法のもとにあらず。我等は老いることを欲せず』。されど、この欲求を得ず。これを求不得苦とす。
原文:乃至、比丘たちよ。病の法にある衆生は、かくの如き欲求を生ず。『我等は実に病の法のもとにあらず。我等は病むことを欲せず』。されど、この欲求を得ず。これを求不得苦とす。乃至、比丘たちよ。死の法にある衆生は、かくの如き欲求を生ず。『我等は実に死の法のもとにあらず。我等は死ぬことを欲せず』。されど、この欲求を得ず。これを求不得苦とす。乃至、比丘たちよ。憂い悲しみ悩み悶える法にある衆生は、かくの如き欲求を生ず。『我等は実に憂い悲しみ悩み悶える法のもとにあらず。我等は憂い悲しみ悩み悶える法の来ることを欲せず』。されど、この欲求を得ず。これを求不得苦とす。
原文:されば、比丘たちよ。要略して言えば、五取蘊の苦とは何か。即ち次の如き色取蘊、受取蘊、想取蘊、行取蘊、識取蘊である。比丘たちよ。要略して言えば、これらを五取蘊の苦と名づく。比丘たちよ。これもまた苦聖諦と名づく。
二、苦集諦を観じて住す
原文:されば、比丘たちよ。苦集聖諦とは何か。この愛は再生を導くことができ、喜びと貪りを伴い、あまねく所で満足を追求する。即ち欲愛、有愛、無有愛である。復次。比丘たちよ。その愛は何処に生じ、何処に止住するか。凡(およ)そ世間に愛すべきもの、喜ぶべきものあるところ、この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:何が世間に愛すべき喜ぶべきものか。眼は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。耳は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、鼻は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、舌は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。身は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、意は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:色は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、声は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、香は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、味は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、法は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:眼識は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、耳識は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、鼻識は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、舌識は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、身識は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、意識は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:眼触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、耳触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、鼻触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、舌触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、身触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、意触は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:眼触によって生ずる受は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、耳触によって生ずる受は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、鼻触によって生ずる受は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、舌触によって生ずる受は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、身触によって生ずる受は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、意触によって生ずる受は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:色想は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、声想は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、香想は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、味想は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、触想は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、法想は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:色思は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、声思は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、香思は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、味思は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、触思は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、法思は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:色愛は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、声愛は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、香愛は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、味愛は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、触愛は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、法愛は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:色尋は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、声尋は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、香尋は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、味尋は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、触尋は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、法尋は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。
原文:色伺は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、声伺は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、香伺は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、味伺は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、触伺は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。乃至、法伺は世間に愛すべき喜ぶべきものである。この愛は即ちここに生じ、ここに止住する。比丘たちよ。これを苦集聖諦と名づく。